Keep it real vol.1 2025/9/14
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2025年9月14日、下北沢WAVER。
a quiet time.主催イベント「Keep it real」が開催された。


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1曲目「Butterfly effect」
破壊力あるイントロに続くサビの美しいメロディ。地下のライブハウスに響き渡るVo.剛の声は、宙を舞う蝶そのものだ。一瞬で観客の心をさらい、異世界へと引き込む。
ステージに目を移せば、赤いライトに映えるBa.明日香の黒いドレスと赤い靴。耳元で揺れる蝶のピアスが、曲の世界観を際立たせていた。

2曲目「The light of Dawn」
雰囲気は一変し、青の世界へ。静寂の森を歩き、記憶の奥に眠る過去をそっと呼び覚ますような曲。ベース、ギター、ドラムそれぞれが物語を紡ぐ。
やがて黄色の光が差し込み、景色は明るさを増していく。
「音は光となり、未来を照らすのでしょう—」
手を伸ばし歌う剛。その横でGt.克圭のコーラスが重なり、揺れる。まるで夜明けの森に風が吹き抜けるような、不思議な情景が浮かんだ。
3曲目「Prism」
これは15年ほど前、剛がソロで発表した曲。サビの英詞は「光が見える限り、どこまでも進む」という意味だ。
彼は本当にその通りに歩んできたのだと気づく。光を追い、仲間と共に。そして今、このステージに立っている。
ラストのロングトーンには一本の信念が貫かれていた。プリズムのように色を変えつつも、まっすぐ差す光。それが彼の奏でる音なのだろう。

4曲目「世界の果て」
疾走感あるナンバーだが、ただ明るい歌ではない。聴き込むほどに見えてくるのは、すべてを失い、果てまで辿り着いた者の孤独。
「少し泣いた」と歌いながら、ほんの少し笑う。繊細な想いの層が重なり合う、その独特の余韻こそ、a quiet time.の真骨頂だと感じる。

5曲目「奇跡」
ラストは怒り、慟哭、渇望を叩きつけるような一曲。全身からほとばしる音、やり場のないエネルギー。感情の奔流が会場を包む。
Dr.隼人の刻むリズムが鼓動のように聞こえてくる。
「まだまだ足りない!!」
そんな叫びが聴こえるようだった。
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「Keep it real」に込められたもの
嵐のようなステージが終わり、頭をよぎったのはイベント名「Keep it real」の意味だ。
直訳すれば「ありのままの自分でいろ」。今回がvol.1で、今後も続いていくという。
20代の自分なら「ありのままの自分でいろ」と背中を押されれば、拳を突き上げて「そうだ!」と叫べたかもしれない。だが、社会の中で我慢や妥協を覚え、自分を偽ることが多すぎるいまは、本心から「これが私だ」と声を張り上げる勇気はない。むしろ、この言葉を突き付けられることに少し怯えていた。
けれど、a quiet time.のステージはその不安を吹き飛ばした。
彼らの曲には必ず「過去」「いま」「未来」がある。後悔や涙、虚しさといった過去をすくい上げ、未来の光へと手を伸ばす。それが、彼らの「ありのままを貫く姿」なのだ。かっこ悪い「いま」の連続でも構わない。
歳を重ね、誰もが迷いを抱える。そこに光の筋を差すようなイベント。
「Keep it real vol.1」は、そんな空間だった。
